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随想――京都における地蔵信仰 (4)

    「六地蔵」とその背景を考えてみる
                             村 雀  渉

地蔵堂めぐりの中間報告
 小地蔵堂の集中地域の踏査で、大体の特徴が分かってきた。お堂にはそれぞれ個性があり、一時代にまとめて大量生産された物ではないらしい。
1 台座は石、又はコンクリートである。高さは上のお堂を大人が立って礼拝する高さ、(95cm前後)、まれに跪(ひざまず)いて礼拝する低い物もある。地蔵堂は正面に卍のつく物が多い。他には「町内安全」の文字入りもある。

2 お堂は柱間(はしらま)が縦・横とも一間(ひとま)。前後に長い長方形で奥に石仏、手前は仏具置き場となる物が多い。扉や格子、幕で仕切られる。

3 屋根は「切妻造」が多い。寺院建築では阿弥陀堂のような平面が方形のお堂の屋根は「方形造」が多いが、小地蔵堂の屋根が切妻造なのは平面が正方形でなく長方形だからであろうか。屋根の線が曲線の「起(むく)り屋根」のもの、正面が「入母屋造」のもの、「唐破風」のもの等がある。銅板葺きが多いが柿(こけら)葺き、瓦葺き、タイルもある。

4 お堂内部の仏具は簡単な物で花瓶一対と茶器、それに鉦、ろうそく立て、線香立てが加わるものもある。唐金(からかね=銅合金)もあるが普通は陶磁器で、赤絵の豪華な物が多い。堂の正面に鈴と紐を下げる物、鰐口(わにぐち)を下げる物もある。

5 市街地にはお堂全体を鉄やジュラルミン(?)の檻(オリ)で囲んだ例が多い。賽銭・お供え泥棒、古美術品泥棒、酔っぱらい・子供によるイタズラ、などからの防備であろう。仏罰を恐れぬ石造文化財の破壊行為もまた、織田信長の時代からの京都の伝統だからであろうか。

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